南天

南天は晩秋から初冬にかけて真っ赤な美しい実を付け、めでたい縁起物としてお正月にも欠かせない花材です。また名前の音が「難を転ずること」にも通じるため、縁起木、厄除け、魔除けとして古くから庭に植えられてきました。

 

南天の実を野鳥が食べている姿を見かけることもありますが、じつは微量の有毒成分が含まれており、人間が安易に実や葉を口にすると危険です。鳥に食べてもらい遠くに運んでもらうために赤くおいしそうな実をつけているのに、なぜ有毒な成分が含まれるのでしょうか?

 

無毒でおいしい果実をつけると、鳥は果実を一度に食べ尽くしてしまい、木のすぐ近くに糞をするので種子は遠くに散布されないことになります。果実に微量の有毒成分があると、少しだけ食べて他の場所に移動し、違う食べ物を探す事になります。そして移動した先で糞をすることになるので、種子は離れた場所で散布されることになります。

 

つまり南天は鳥のえさの少なくなった秋から冬にかけて目立つように赤い果実をつけ、微量の有毒成分を含ませることでより遠くに散布されるようにしているのです。このように人間などの動物と違い、自分で動けない植物の種族繁栄の戦略には驚かされることがたくさんあります。よく目にする植物にもまだまだ知らない秘密があるかも知れませんね。